こんにちは!KIKUを運営している山口こうじ店専務の山口和真です。
大学や国の研究機関では、最新の食事や腸活、微生物などの様々な研究がされており、学会誌にて発表されています。本記事は、最新の研究報告を分かりやすくまとめ、皆様の健康への知識として取り入れてほしい内容となっております。
今回は「microorganisms」に2023年に投稿された、京都大学大学院教育学研究科 明和政子教授、大阪大学萩原圭祐特任教授論文らの論文「Altered Gut Microbiota Composition Is Associated withDifficulty in Explicit Emotion Regulation in Young Children」を紹介します。昨今、幼少期の腸内細菌の様相が子供の情緒の発達への影響を与える可能性が示唆されていましたが、この論文ではとある腸内細菌と子供の感情制御との因果関係が報告されています。
この論文の内容について
腸内細菌と幼児期の感情制御などの関係性を分析
幼少期の感情抑制や認知制御といった「実行機能(認知科学上、目標を遂行するための脳機構)」の発達に腸内細菌が関与している可能性が示唆されており、原因菌などを特定することで食事治療などにより、幼児期の感情制御の発達を期待できると考えられます。この論文では、認知機能と腸内細菌の発達が顕著な時期の3~4歳の子供257人の腸内細菌叢の分析を行い、腸内細菌と食習慣、悪玉菌由来の炎症性疾患の有無、身体的症状や行動の関係を分析しました。
結果
腸内に放線菌・ステレラ菌が多いと、幼少期の感情抑制の発達に問題が生じる可能性が高い。
研究の結果、幼少期の自己感情抑制(自身の感情の状態を理解し、安定した感情を維持することができる力のこと)の発達と腸内細菌の放線菌とステレラ属菌の因果関係が示唆されました。特に2種類の菌が多い子供は、感情制御の発達に問題が生じる可能性が高く、問題行動などが散見されると言われております。さらに放線菌とステレラ属菌は炎症性サイトカイン(炎症を引き起こすタンパク質のこと)を生産することから、炎症性腸疾患などもともに発症していたり、一方で、炎症性腸疾患の子供は感情抑制の発達にリスクが生じる可能性が示唆されるとのことでした。
腸内に放線菌・ステレラ菌が多い子供は、緑黄色野菜の摂取量が少ない。
さらに、放線菌とステレラ属菌の増殖メカニズムを調べるため、子供の食生活を分析したところ、正常な腸内細菌の子供と比較して、緑黄色野菜の摂取量が少なく、好き嫌いも激しい傾向だったそうです。この結果から、野菜の摂取量が不足することで十分な食物繊維が摂取できず、腸内環境を整える善玉菌の増殖できず、悪玉菌が増殖したと考えられます。
幼少期の食物アレルギーの有無と、感情抑制の発達リスクに因果関係は見られない。
一方で、食物アレルギーや小児喘息をもつ子供の腸内細菌は、炎症を引き起こす物質を生産する悪玉菌が多い傾向がありますが、自己感情制御の発達リスクがある子供ではアレルギーなどとの因果関係が見られなかったようです。ただ、身体的成長とともにアレルギー発症の可能性が増加する場合もあると示唆されました。
まとめ
子供の精神的な成長「感情制御」と関係する腸内細菌は、「放線菌」「ステレラ菌」だった!
昨今の研究で、子供の精神的な成長と腸内細菌が関わっていることが示唆されていましたが、原因菌がようやく発見されたという論文でした。性格や精神、心理的な学問を認定科学というそうで、今回は「感情制御」における関係菌でしたが、認知機能や実行機能といった違う領域の発達にも腸内細菌が関わっているかもしれませんね。
今回の論文で一番の衝撃は、幼少期の野菜(特に緑黄色野菜)の摂取が不足することで、放線菌やステレラ菌といった悪玉菌が増殖してしまい、感情を制御するホルモンや精神の安定をもたらす化学物質の生産が不足したりすることで、問題行動や攻撃的な性格となってしまう傾向があるということです。性格は一生ものですから、幼児期の食習慣が性格の形成に影響を及ぼしているかもしれないと考えると、本当に怖くなりますよね。好きなものだけ食べさせるのが愛情ではなく、苦手でも食べさせてあげることが、子供の将来のためにも良いことなのかもしれません。
また、これは子供だけでなく大人にも当てはまることがあると思います。例えば、結婚を機に性格がとても丸くなった人がいると言った話をよく耳にしませんか?奥様のバランスの取れた手料理に胃袋を掴まれたことで、善玉菌の量が増え、感情制御ができるようになったのかもしれません。
性格にまで腸内細菌が関わってくるとなると、なおさら「腸活」の重要性を感じます。
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