【「腸活」を始めたい方へ】発酵のプロが腸活の仕組みとおすすめ食材をご紹介

こんにちは!KIKUを運営している山口こうじ店専務の山口和真です。

健康や美容への効果が期待されるとして今注目されている腸活。「腸活はダイエットに効果的」「発酵食品を摂ると良い」などさまざまな情報が飛び交っていますが、皆さんは「腸活」がどのような仕組みなのか、なぜ健康や美容に効果があると言われているのかご存知ですか?

本記事では、大学院を出て、老舗麹屋の専務として日々麹製品の生産に取り組みながら、麹の研究を重ねている山口和真から皆さまへ「実践に役立つ腸活の仕組み」をお伝えします。

「なぜ腸活が健康・美容への効果があると言われているのかを知りたい」「腸活を始めてみたいけど何から始めれば良いかわからない」「始めたけどイマイチ効果がわからない」という方に読んでいただきたい記事です。

目次

お腹の中に微生物の「お花畑」

腸活と密接に関係している「腸内フローラ」

腸活を一言でいうと「腸内環境を整えること」です。
私達、人類の体の中、特に「腸内」にはおよそ1000種類、100兆個の微生物が生息していることが知られています。ヒトの細胞の数は約37兆個と言われ、驚くべきことに腸内には細胞の3倍の数の微生物がいることになります。腸内で多種多様な微生物が菌種ごとに密集している様子が「お花畑(flora)」に見えることから、この腸内細菌を総称して腸内フローラとも呼ぼれています。この腸内フローラが、腸活と密接に関係しているのです。

腸内細菌(腸内フローラ)の役割は大きく2つ

 腸内細菌の役割は大きく2つ

  • 胃や小腸などで分解できなかった食べ物のカス(食物繊維など)を分解すること
  • 短鎖脂肪酸やビタミン群などの様々な物質を生産すること

食べ物のカス(食物繊維など)を分解する

腸内細菌には、胃や小腸などで分解できなかった食べ物のカス(食物繊維など)を分解し、エネルギー源として体内に吸収しやすくする役割があります。

短鎖脂肪酸やビタミン群などの様々な物質を生産する

あまり聞き馴染みのない短鎖脂肪酸は、酪酸、酢酸、プロピオン酸などを指します。これらは腸内や表面粘膜の環境を整え、正常な免疫作用の維持(1)をするだけでなく、大腸内でのミネラル分の吸収の促進など多様に作用します。

また、糖質やタンパク質、脂質の代謝を支えるビタミンB群や傷口の血液の凝固や骨を丈夫にするビタミンKのような、現代人に不足しがちな様々なビタミン群の生産も行います。

このように、腸内細菌は私達が長く健康的な生活を送る様々な役割を担っているのです。

中には悪い働きをする腸内細菌も

 一方で、腸内細菌の中には病気の原因となりうる有害物資を産生する菌も存在します。さらに、「腸内環境」が変化することで悪い働きをしだす菌もいます。食べるものや睡眠、ストレス、医薬品などの摂取によって、敏感に腸内環境が変化し、私達の体に影響を及ぼすのです。

腸内細菌の種類は3つ

 腸内にいる約1000種類の細菌は、以下の3つに分類されます。

  • 善玉菌
  • 悪玉菌
  • 日和見菌

善玉菌

乳酸菌やビフィズス菌を代表とする、体にとって善い働きをする腸内細菌です。乳酸菌は小腸などの酸素濃度の低い環境でも活動が可能であり、糖を分解して「乳酸」を生産し、腸内を酸性にすることで病原菌などの他の菌の繁殖を抑制します。同様に、ビフィズス菌も乳酸や酢酸を生産し、整腸作用や免疫機能の調節を行います(2)

悪玉菌

腸内で動物性タンパク質や油脂を分解し、アンモニア、硫化水素、インドールなどの有害物質やガスを生産します。腸内の腐敗や下痢、腹痛、慢性的な便秘を引き起こすだけでなく、老化や発がん性物質の生産の因果関係も報告されています。ウェルシュ菌やブドウ球菌、大腸菌など、悪玉菌の中には元来病原性を有する菌も多数存在しますが、消化管で分解できなかった動物性タンパク質や油脂の分解を行ったり、ビタミンの合成や感染予防も担っているため、すべてが悪いというわけはありません。

日和見菌

バクテロイデス、連鎖球菌などの菌で、健康なときには善い働きをしますが、悪玉菌の量が増加したり、病原菌への感染が起こると有害物質の生産などの悪い働きをします。

その働きから3種類に分類されますが、善玉菌の中には他の菌と作用することで悪い影響を及ぼすものもいたり、悪玉菌も環境に応じてビタミンの合成などの善い働きをする菌もいます。

重要なのは腸内細菌のバランス

腸内の細菌量の比率は善玉菌:日和見菌:悪玉菌=2:7:1がベスト

健康的な生活を送るためにも、3種の腸内細菌の「バランス」が重要であると言われています。腸内での細菌量の比率として、善玉菌:日和見菌:悪玉菌=2:7:1の割合が最もバランスの取れた状態であり、善玉菌がの最大の働きと悪玉菌の働きの抑制が期待できると言われています。一方で、このバランスが崩れ、善玉菌の量より悪玉菌の量が多くなると、便秘や下痢、肌荒れが症状として現れ始め、病気への罹患リスクが上がると言われています。現状、腸内細菌を確認するための腸内検査キットなどが開発されており、自宅でも手軽に検査が可能となっていますが、便の状態である程度の腸内細菌の状態を見分けることができます。

便で見分ける腸内細菌の状態

黄色〜茶褐色のなめらかな柔らかい便

善玉菌量が多い便です。善玉菌の働きで腸内が弱酸性下になると便の色が黄色に近くなり、さらに腸内で水分の調整が正しく行われていることから、なめらかできれいな便となります。

濃い茶色で泥状や液体状、硬かったり、コロコロとした便

悪玉菌量が多い便です。悪玉菌の働きで腸内がアルカリ性になると便の色が濃い茶色になります。また、悪玉菌の生産する有害物質の影響で、腸内の水分調整がうまくできず、液体状になったり、とても硬い便になったりします。

腸内環境はさまざまな要因で敏感に変化する

腸内環境は様々な要因で敏感に変化するため、毎日、便を観察して腸内細菌の状態を確認したいところです。悪玉菌が増加する要因として、野菜を食べずにお肉や脂っこい食べ物ばかり食べたり、睡眠不足や運動不足、ストレス、お酒の飲み過ぎなどが挙げられます。一般的な生活習慣病の原因として挙げられるものとほぼ一緒であることから、悪玉菌の増加と生活習慣病の因果関係についても研究されています。

短鎖脂肪酸を生成する善玉菌の量も重要

また、昨今の研究でバランスだけでなく、「短鎖脂肪酸を生成する善玉菌の量」も重要なことがわかってきました。乳酸や酪酸、酢酸を生産する「ビフィズス菌」や「酪酸生成菌」の量を増やすことで、腸内環境を整えるだけでなく、腸内の炎症を抑えたり、免疫を調整したり、肥満になりにくくしたりといった作用が期待できます。メーカーの長年の研究の成果により、スーパーではビフィズス菌が豊富に含まれたヨーグルトなどの乳製品が大きく販売されていることからも、これらの菌が注目されていることがよくわかります。

腸内細菌のバランスを良くするために「腸活」を

腸内細菌のバランスを理想の形にするためには、善玉菌の量を増やし、相対的に悪玉菌より多い状態を作るしかありません。すなわち、「腸活」を行うのです。規則正しい生活と適切な食事により、善玉菌の増加に繋がります。今回は、腸活にもっとも重要である「食事」に注目して、基礎とも言える3つの方法をまとめます。

  • 善玉菌の餌を与える(プレバイオティクス)
  • 生きた善玉菌を食べる(プロバイオティクス)
  • 死んだ菌を食べる(バイオジェニックス)

1、善玉菌の餌を与える(プレバイオティクス)

1つ目は、善玉菌の餌となる物質を積極的に摂ることです。

微生物にも、餌の好き嫌いがある

どんな微生物でも、生きるためにはエネルギーを獲得する必要があり、餌となる物質によっても好き嫌いがでます。例えば、甘みのもととなるグルコースが好きな菌もいれば、アルコールからエネルギーを取り出す菌もいます。

善玉菌は「食物繊維」と「オリゴ糖」が餌に

善玉菌の代表的な菌種である「ビフィズス菌」や「乳酸菌」は、腸内では食物繊維とオリゴ糖からエネルギーを得ます。もちろん、彼らも炭水化物などの栄養価が高いものも大好きですが、そのような栄養素は腸に辿り着く前に人体に吸収されてしまうため、消化液で分解されない難分解性の食物繊維とオリゴ糖だけが腸内の善玉菌の餌となります。

食物繊維は大きく2種類

食物繊維には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があり、ともに整腸作用に優れていると言われています。便の量を増やし、腸内の運動を活発にする不溶性食物繊維は、ブロッコリーやごぼう、りんご、きのこなどの多くの野菜や果物、穀類に含まれています。便の水分量を調整し、便を柔らかくする水溶性食物繊維は、人参、オクラ、ほうれん草、ブロッコリー、ごぼうなどの野菜や納豆などの豆類、ひじきなどの海藻類に多く含まれ、善玉菌の増加に特に効果的なのは水溶性食物繊維と言われています。

オリゴ糖は含有量が少ないため、継続して摂取する必要がある

オリゴ糖を多く含む食べ物として、玉ねぎ、ネギ、ごぼう、アスパラガス、ブロッコリー、ごぼうなどの野菜や大豆などの豆類、バナナやアボカドなどの果物、はつみつなどが挙げられますが、それぞれ含有量が少なく、継続して摂取する必要があります。サプリメントのオリゴ糖もありますが、過剰に摂取するとお腹がゆるくなったりする場合もあるため、自然なオリゴ糖を摂取するためにも食事に野菜や果物を積極的に取り入れましょう。

特にブロッコリーとごぼうは、食物繊維とオリゴ糖のどちらの含有量が多いため、腸活優等生として毎日食べたい野菜でもあります。

2、生きた善玉菌を食べる(プロバイオティクス)

2つ目は、生きた善玉菌を食べることです。

実は生きたまま腸に届く微生物はとても少ない

乳酸菌飲料のCMで、よく「生きたまま腸に届く」といったフレーズを聞いたことがないでしょうか。実は、口から接種した微生物のほとんどは胃酸によって死んでしまい、生きたまま腸に届く微生物はとても少ないのです。一方で、昔から世界各国で食べられてきた「ヨーグルト」の中には、消化管で死なずに腸にまで届く「乳酸菌」が多く見つかっています。

乳酸菌は消化液から微生物を守る役目も

その代表的な乳酸菌が、乳を発酵させてヨーグルトを作るブルガリクス菌とサーモフィルス菌であり、彼らが作ったヨーグルトは消化液から微生物を守り、腸内にまで送り届ける役目も担っています。腸内にたどり着いた乳酸菌は、腸内を弱酸性にし、生息する善玉菌の増殖をサポートし、悪玉菌の増殖を妨げてくれます。腸活において、「ヨーグルト」は最優秀選手といっても過言ではなく、、日本人が不足しがちなビタミンDやビタミンA、鉄、亜鉛などが含まれていることからも、毎日食べていただきたいものです。私も深刻な鼻炎に悩まされていましたが、毎日ヨーグルトを摂取したところ、かなり症状が軽減されたと実感できたほどです。

食物繊維とオリゴ糖を含む納豆もおすすめ

また、納豆もとてもおすすめです。納豆菌は芽胞菌と呼ばれる簡単には死滅しない菌であり、消化管でも全く問題なく腸内にたどり着き、腸内の乳酸菌の増殖を促進させる研究結果もでております(3)。さらに、納豆は善玉菌の餌となる水溶性食物繊維とオリゴ糖を含んでおり、ヨーグルトともに腸活の優秀選手といえます。

3、死んだ菌を食べる(バイオジェニックス)

死んだ菌は、腸活に効果がないの?

腸活の話をする際に必ず、死んだ菌は腸活に意味はないのかという意見が出ます。確かに、流通の問題から甘酒や漬物などの発酵食品は殺菌されていることがほとんどであり、麹菌などは胃酸で簡単に死滅してしまうことから、生きた状態で腸内に送ることは難しいです。しかし、昨今の研究で死んだ菌の残骸が、腸活にとても効果があることがわかってきました(4)。例えば、乳酸菌飲料や甘酒に含まれる乳酸菌や麹菌が死んだ状態(死菌)で腸内にたどり着くと、悪玉菌を吸着し、体外への排出を促したり、善玉菌の増殖を促す働きがあります。死菌がもたらす腸内への影響は、まだまだ研究がされていないため、今後様々な有益なデータが出てくるのが予測されます。味噌や漬物などの発酵食品は、まさに菌の塊なため、地域ごとの様々な味の違いを楽しみながら積極的に取り入れてほしい食べ物です。

長寿が多い日本ですが、数多く存在する発酵食品のおかげかもしれません。

疾患と腸内細菌について

腸内細菌が病気を予防する?!

昨今の研究で、腸内細菌と特定の病気が密接に関与していることがわかってきました。例えば、幼少期に発症するⅠ型糖尿病は、両親からの遺伝により引き継がれた腸内細菌が成長とともに正常に発達しないことで、免疫機構の異常を引き起こし、インスリンを生産する膵臓の細胞を破壊することで起こると言われており、腸内環境の改善を行うことで発症率を下げられると言われています(5)。同様に、糖尿病以外でも腸内細菌との関係が示唆される疾病が多く見つかっており、一部のガンも腸内細菌が原因があるのではないかと言われています。

腸内細菌と精神疾患の関係性

また、うつ病患者や精神病患者において、症状とともに便秘を併発している場合がかなり多いと報告されています。うつ病患者は血中の炎症性サイトカインという脳内の神経を傷つけるタンパク質量が多いことがわかっており、この物資の生産に腸内細菌が関与していることが示唆されています(6)。特に、腸内細菌の中にはコルチゾールといったストレスへの耐性を高めるものもあり、腸内細菌と脳がリンクしていることから「脳腸相関」と称されています。最新の研究では、医薬品を用いず、健康的な食事管理を行うことで腸内細菌を改善し、精神疾患の治療を行うといった試みもされています。

研究が進めば、腸活で病気が治療できる世界が実現できるかも

レーウェンフックによって細胞が見つかり、学問として微生物学が研究されるようになって約200年となりましたが、微生物がもたらしたものは私達の生活をより豊かにしてきました。たった200年でこれほどまでの文明の進化をもたらしたのですから、さらに研究される事によって、今まで治ることのないとされた病気への治療や腸内細菌をコントロールし、病気を発症させない方法の確立といったことが可能となるかもしれません。昔から「医食同源」という言葉がある通り、薬を用いずに腸活に則った食事を摂ることで病気が治療できる世界が実現できるかもしれません。

まとめ

今も研究が進んでいる腸活。正しく理解し効果的な食事を

腸活は現在も研究が進められており、まだまだ健康・美容への可能性が広がる分野です。腸活の仕組みを理解し、正しく効果的に食事を摂りましょう。

腸活で、明日の私が少し素敵になる。KIKUシリーズ

KIKUシリーズは、山口こうじ店が展開する発酵食品ブランドです。好みに合わせて甘みや粒感が選べるパーソナライズ甘酒をはじめとして、発酵ジャムなど腸活を美味しく気軽に生活に取り入れられる商品を展開しています。

腸活に挑戦してみたい、普段の生活に積極的に発酵食品を取り入れたいという方は、ぜひこちらのページもご覧ください。

参考文献

(1)腸内細菌由来短鎖脂肪酸における宿主エネルギー代謝機能制御

:Glycative Stress Research、清水秀憲 、北野(大植)隆司 、木村郁夫(2019)

(2)ビフィズス菌の免疫調節作用とその作用機序に関する研究

腸内細菌学雑誌、岩淵 紀介(2014)

(3)納豆菌 Bacillus subtilis MC1 芽胞を含む納豆の摂取が 健常成人女性の排便および糞便内菌叢に及ぼす影響

生活衛生(Seikatsu Eisei)Vol. 53、 竹村 浩,塩谷順彦,小森美加,陶 易王

(4)腸内菌叢研究の歩み

腸内細菌学雑誌 25 : 113–124,(2011)、 光岡 知足

(5)肥満・糖尿病と腸内細菌

日本内科学会雑誌第104巻第1号(2015)、坊内 良太郎、小川 佳宏

(6)腸内細菌と精神神経疾患からみる腸脳相関

第 62 回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(2021)、本郷道夫
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この記事を書いた人

山口 和真のアバター 山口 和真 有限会社山口こうじ店 専務

福島県白河市出身。
東京農業大学醸造科学科で基礎的な醸造学を学び、より深い知見を得るため同大学院に進学。発酵食品の研究を行う研究室で日々発酵試験を行いながら、キノコの特異性に惹かれ、研究テーマに。キノコを用いた環境浄化について論文を挙げた。その後、実家家業である有限会社山口こうじ店に入社し、大学院生活で得た微生物学的知識から新たな発酵食品の開発を行う 。地元TV放送局でのレギュラー出演や雑誌・新聞等にも多数出演。徹底した「本物の味」造りをモットーに、皆様に食で笑顔と健康を届ける麹屋を目指す。
受賞歴:ふくしま産業賞 奨励賞、白河関のみそ 全国味噌鑑評会 平成6~8年の3年連続理事長賞

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