【専門家が解説】腸活のカギとなるレジスタントプロテインって?おすすめ食材と含有量を調査!

和食は健康食としても世界で注目されており、特に発酵食品は日本人の長寿の源なのではと考察されるほどです。しかし、日本では「なぜ体にいいのか」や「どの成分が体にいいのか」という栄養学の基礎研究があまりされてこなかったことから、発酵食品の機能性の要因があまりわかっていないのが現状です。アメリカと比較し、栄養学や腸内環境などの研究は30年も遅れていると言われており、例えばアメリカでは2000年初期より、腸内細菌叢の研究がなされ、現在では「腸内細菌叢の移植手術」や「腸内細菌の経口摂取」といった実験がすでに行われているほどです。

しかしながら昨今の研究により、麹菌が作り出すとある機能性物質が発見され、今まで科学的に説明が難しかった甘酒や味噌などの麹を使用した発酵食品が、なぜ腸内細菌叢に良い影響をもたらすかがわかってきました。その物質こそが「レジスタントプロテイン」であり、腸活を行うにあたり、重要な役割を担ってくるのです。

本記事では、大学院を出て、老舗麹屋の専務として日々麹製品の生産に取り組みながら、麹の研究を重ねている山口和真から皆さまへ腸活の鍵となる「レジスタントプロテイン」をわかりやすく解説します。

腸活を始めたい、腸活を深く学びたいという方に読んでいただきたい記事です。腸活に効果的な物質である「レジスタントプロテイン」について知ることで、より健康的な腸を目指していきましょう!

腸活の基本的な知識についてはこちらの記事でもご紹介しておりますのでぜひご覧ください。

目次

レジスタントプロテインとは

レジスタントプロテインは、体内で代謝されにくいタンパク質のこと

レジスタントプロテインとは、「resistant(耐性のある、抵抗のある)」「protein(タンパク質)」の名の通り、体内で代謝されづらい難分解性タンパク質を指します。この性質は食物繊維やオリゴ糖などと同様に、消化管で分解・吸収されず、腸内細菌の栄養源として利用されるだけでなく、脂質や油分などを吸着し、体外に排出する効果があると言われています。

1970年代より、豆類や穀物のタンパク質が卵や肉などの動物性のタンパク質と比較して、高いコレステロール血症改善効果が示唆されたことにより発見され、ラットを用いた実験でも有用な結果となりました(1)。レジスタントプロテインは、大豆、そば、酒粕、セシリン(蚕が生産する絹に含まれるタンパク質、以下絹タンパク質)などに特に含まれると考えられてきましたが、昨今の研究で麹甘酒などの米麹加工品中にも多く含まれていることがわかってきました。

レジスタントプロテインの機能性

レジスタントプロテインの効果として報告されている機能性は以下

  • コレステロール血症の改善効果
  • 脂質異常による肥満の予防
  • 動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞のリスク低減
  • 大腸がんの発症リスクの減少

レジスタントプロテインの機能性で最も有名なのが「コレステロール血症改善効果」です。コレステロールから生産される胆汁酸をレジスタントプロテインが吸着し、体外への排出を促す効果があり、胆汁酸の生産を促進することでコレステロールが消費され、結果的に体内のコレステロール濃度が減少します(1)。これにより、脂質異常による肥満の予防や悪玉コレステロールを原因とした動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞のリスク低減の報告もされており、生活習慣病の予防にも大いに期待できる物質です。また、このレジスタントプロテインの胆汁酸結合能は、大腸がんの発症リスクを減少させる報告もされています(2)

さらに腸内細菌の発酵制御にも役立っていることがわかっています。腸内での短鎖脂肪酸(腸内の炎症を抑える炎症性サイトカインの発言抑制や腸内のpHの低下などを行う。酪酸やプロビオン酸など)の生産量の増加にレジスタントプロテインが寄与していると言われており、善玉菌の餌として(プレバイオティクス)腸内で消費されていることが示唆されています(3)

レジスタントプロテインを多く含む食品

食物繊維の1日摂取量の目安として、成人男性で20g、成人女性で16gとされている一方で、レジスタントプロテインは113mg/100mlが一日摂取量の推奨量とされています(4)。では、どのような食材にどのくらいのレジスタントプロテインが含まれており、どのような機能性を有するかを簡単にまとめていきます。

レジスタントプロテインを含む食品名含有量(100gあたり)
大豆12.0~16.7g
木綿豆腐1.2~2.1g
絹ごし豆腐1.0~1.5g
高野豆腐・凍み豆腐10.0~25.0g
そば2.5g
酒粕0.2~1.2g
米味噌0.06g~0.1g
麦味噌0.003~0.005g
豆味噌0.2~0.3g
麹甘酒0.062〜0.1g(概算)
1日に摂取するレジスタントプロテインの推奨量は、0.113g/100ml

豆腐(高野豆腐、凍み豆腐など)

一般的な大豆のレジスタントプロテイン量は12.0~16.7g/100g(原料100g中に含まれるレジスタントプロテイン量のこと)を含み、木綿豆腐で1.2~2.1g/100g程度、絹ごしで1.0~1.5g/100g程度含まれているとされています(製法や製造メーカーによって差異あり)(5)。一方で、豆腐を乾燥させて作る高野豆腐や凍み豆腐では10~25g/100gものレジスタントプロテインを含み、これら由来のレジスタントプロテインにはコレステロール血症改善効果や糖尿病の予防・改善、食後血糖値や中性脂肪の上昇抑制、免疫賦活効果が期待できると報告されています(6)

そば

そば粉中に含まれるレジスタントプロテイン量は2.50g/100gと大豆と比べ、含有量は少ないです(7)が、大豆由来レジスタントプロテインと比較して、コレステロール血症改善効果が高く、摂取後の排便量の顕著な増加から、消化管内の脂質等の吸着能の高さが示唆されています(3)

酒粕(粕甘酒)

酒粕中にはおよそ0.2~1.2g/100gのレジスタントプロテインが含まれており、サプリメントで販売されている酒粕再発酵物やプロファイバーでおよそ1.5~23g/100g含まれています(8)。酒粕由来のレジスタントプロテインでは、コレステロール血症改善効果等が期待されるだけでなく、長期間摂取による肌のキメの改善が認められており、美容成分として注目されています。同様に酒粕を原料として作られる粕甘酒にも少量ながらレジスタントプロテインが含まれており、定期的に摂取することで美容などの機能性を実感できます。

味噌(米味噌、麦味噌、豆味噌)

米麹を使用した米みそでは約0.06g~0.1/100g(9)、九州四国で見られる大麦麹を使用した麦味噌では0.003~0.005g/100g(10)、東海を中心として食べられている豆と塩のみで作った豆味噌は0.2~0.3g/100gのレジスタントプロテインが含まれていると報告されています(製法や原料によって大きく変動あり)。タンパク質含有量の多い大豆を多く使用する豆味噌が多く、麦を多く使用する麦味噌では少ない傾向があります。一般に食べることの多い米みそは、味噌汁1食(味噌約20g)で約30mgのレジスタントプロテインを含んでおり、豆腐やそばなどと比べ、含有量は少ないですが、3食接種することで一日摂取推奨量に近いレジスタントプロテイン量をとることが可能です。

麹甘酒

麹と米と水のみで仕上げた麹甘酒のレジスタントプロテイン量は平均して約62mg/100ml(11)と報告されています。製造メーカーや米の品種によって含有量に大きな差がありますが、1日100~200mlくらいの麹甘酒を飲むことで一日推奨摂取量のレジスタンプロテインをとることが可能です。

主要な食品を上げてみましたが、昔から体にいいとされている食材にレジスタントプロテインが多く含まれていることがわかります。植物性タンパク質や発酵食品を意識した献立にすることで、レジスタントプロテインをしっかりと摂取できそうですね。

アレルギーに注意!

レジスタントプロテインの機能性や効果についてポジティブな内容でまとめてきましたが、アレルゲン物質としての性質も持つという報告もされています。そのため、ご自身の持つアレルギーを鑑みて、食材の選択を行っていただき、レジスタントプロテインの日常的な摂取に繋げていただけたらと思います。

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参考文献

(1)レジスタントプロテインの整理作用

日本農芸化学会会誌、森田達也、1996

(2)消化管で作用する疾病予防成分に関する栄養学的研究

日本栄養・食糧学会誌、加藤範久、2012

(3)“レジスタントプロテイン”としてのそばタンパク質とセシリンの生体調整機能

日本栄養・食糧学会誌代53巻第2号、加藤範久、栢下淳、佐々木真宏、(2000)

(4)甘酒中のレジスタントプロテインの機能性解析について

日本醸造学会(2022)117巻、尾関健二

(5)大豆と豆腐に含まれるレジスタントプロテインに関する研究

長野県工業技術総合センター研究報告(2020)、高橋佑汰

(6)凍り豆腐由来レジスタントプロテインの免疫賦活効果

薬理と治療(2021)49巻4号、石黒貴寛、田中沙智

(7)レジスタントプロテイン含有量の調査

長野県工業技術総合センター研究報告(2021)、高橋佑汰

(8)健康と美容に貢献する「酒粕」の成分

日本醸造協会誌(2012)、107巻5号、渡辺敏郎

(9)豆味噌のレジスタントプロテインについて

日本健康医学会雑誌(2016)25巻3号、望月 健太郎他

(10)麦味噌のレジスタントプロテインについて

日本健康医学会雑誌(2016)25巻3号、望月 健太郎他

(11)市販甘酒中のレジスタントプロテインであるプロラミン量の測定

日本醸造協会誌(2021)、116巻、尾関健二他
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この記事を書いた人

山口 和真のアバター 山口 和真 有限会社山口こうじ店 専務

福島県白河市出身。
東京農業大学醸造科学科で基礎的な醸造学を学び、より深い知見を得るため同大学院に進学。発酵食品の研究を行う研究室で日々発酵試験を行いながら、キノコの特異性に惹かれ、研究テーマに。キノコを用いた環境浄化について論文を挙げた。その後、実家家業である有限会社山口こうじ店に入社し、大学院生活で得た微生物学的知識から新たな発酵食品の開発を行う 。地元TV放送局でのレギュラー出演や雑誌・新聞等にも多数出演。徹底した「本物の味」造りをモットーに、皆様に食で笑顔と健康を届ける麹屋を目指す。
受賞歴:ふくしま産業賞 奨励賞、白河関のみそ 全国味噌鑑評会 平成6~8年の3年連続理事長賞

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